カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない~
一瞬甘い考えが頭を過ったが、それはあっと今に打ち砕かれた。
おばさんはバッグの中身をごそごそと漁ると、茶封筒を私に手渡してきた。
「由華ちゃんがそう言ってくれたら私も安心だし、何よりも本当に嬉しいわ。蒼空もだけれど、私も由華ちゃんか娘になってくれたらって夢見てたこともあったから」
渡された茶封筒の中身を確認するべきかどうかでまごついていると、おばさんが私の手からそれを取り、一枚の紙を取り出した。
ああ、やっぱり逃げられないのか……。
一目見ただけでそう悟ったのは、その紙を私が頻繁に目にしているからだ。
「蒼空の相手が由華ちゃんだなんて思いもしなかったから、最悪強硬手段に出ようと思って持ってきたのよ、この婚姻届け」
なんて用意のいいことだろう。
蒼空が渋ろうものならば、強引にでも書かせて提出するつもりだったに違いない。
「母さん、そこまで用意してくれなくても、俺たちでちゃんとするから……」
私ほどではないが、蒼空も動揺しているらしく、おばさんから婚姻届けを取り上げようと手を伸ばしたが、あっさりとその手を叩き落された。
「この婚姻届けでいいじゃない。雑誌についてたものなんだけど、余白にクローバーついてて可愛いのよ。せっかくなら普通のじゃなくてこれにしましょうよ」
入籍を逃れられるかもしれないと思っていた私にとって、これは全然ありがたくもなんともない申し入れではあったが、何一つ疑わずに心の底から私たちの『偽』の結婚を祝福してくれている姿を見てしまったら、とても嫌だとは言えなかった。
「蒼空、おばさんがせっかく用意してくれたんだから、これにしましょ」
私の表情を見て腹を決めたと悟ったのか、蒼空は少し申し訳なさそうに眉を寄せて笑った。
おばさんはバッグの中身をごそごそと漁ると、茶封筒を私に手渡してきた。
「由華ちゃんがそう言ってくれたら私も安心だし、何よりも本当に嬉しいわ。蒼空もだけれど、私も由華ちゃんか娘になってくれたらって夢見てたこともあったから」
渡された茶封筒の中身を確認するべきかどうかでまごついていると、おばさんが私の手からそれを取り、一枚の紙を取り出した。
ああ、やっぱり逃げられないのか……。
一目見ただけでそう悟ったのは、その紙を私が頻繁に目にしているからだ。
「蒼空の相手が由華ちゃんだなんて思いもしなかったから、最悪強硬手段に出ようと思って持ってきたのよ、この婚姻届け」
なんて用意のいいことだろう。
蒼空が渋ろうものならば、強引にでも書かせて提出するつもりだったに違いない。
「母さん、そこまで用意してくれなくても、俺たちでちゃんとするから……」
私ほどではないが、蒼空も動揺しているらしく、おばさんから婚姻届けを取り上げようと手を伸ばしたが、あっさりとその手を叩き落された。
「この婚姻届けでいいじゃない。雑誌についてたものなんだけど、余白にクローバーついてて可愛いのよ。せっかくなら普通のじゃなくてこれにしましょうよ」
入籍を逃れられるかもしれないと思っていた私にとって、これは全然ありがたくもなんともない申し入れではあったが、何一つ疑わずに心の底から私たちの『偽』の結婚を祝福してくれている姿を見てしまったら、とても嫌だとは言えなかった。
「蒼空、おばさんがせっかく用意してくれたんだから、これにしましょ」
私の表情を見て腹を決めたと悟ったのか、蒼空は少し申し訳なさそうに眉を寄せて笑った。