カモフラ婚～CEOは溺愛したくてたまらない～
それは今までの経過を考えれば当然のことだと思う。

「おばさんの病気のこともあるし、表向きは夫婦としてやっていきましょう？私たちの本当の関係は、少しずつ進めていけたらって思うの。本物の夫婦になれるか、それともやっぱり離婚を選ぶのか。先のことはわからないけど……」

「由華ちゃんっ」

私の言葉を遮るように蒼空の声が響いた。

「一部納得できないところもあるけど、由華ちゃんの言いたいことも理解はできる。だから期限を決めよう」

「何の期限？」

「一年だけ、幸せな夫婦を演じてほしい。その間に俺は由華ちゃんが本当に俺のことを好きになってくれるように頑張るから。一年経ってどうしても俺のことを好きになれなかったら……。その時は由華ちゃんの気持ちを優先して……離婚しよう」

「一年後に離婚……」

昨日結婚式をしたばかりで、数時間後に婚姻届けを提出しに行くというのに、一年後に離婚する話をしているなんて、おかしな話だ。

「一年だけ由華ちゃんの人生を俺にちょうだい？絶対に後悔させないから」

私が蒼空のことを愛せなかったら、私を解放するために一年後に離婚するということか。

そこまで言うということは、蒼空はきっと私を好きにさせる自信があるのかもしれない。

カモフラージュ婚であったとしても、私だってたった一年でバツイチになるのは不本意だが、愛のない結婚を一生続けていくのも辛くなる。

だったら蒼空には私の心をつかむように、思いっきり頑張ってもらおうじゃないか。

望むところだとばかりに「よろしく」と手を差し出すと、蒼空はぎゅっと両手で握りしめた。
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