カモフラ婚～CEOは溺愛したくてたまらない～
「ひとまず、一年間はここで暮らすということでいいかな？」

唐突に現実味のあることを言われ、私は固まった。

「ここで……暮らす？」

そりゃ男女が結婚すれば共に暮らすというのは自然なこと。

ここに来る前までは、自分だって今日はどこに帰るのか気にしていたじゃないか。

けれど『泊まる』と『暮らす』では事の大きさが違いというか。

「由華ちゃんからしてみれば自分の家を離れるのは寂しいよね。でも由華ちゃんの家はワンルームなんでしょ？さすがにそこに二人で暮らすというのは無理があると思うんだ」

「確かにそうだけど……」

「ということで、はい」

蒼空は私の手のひらに、いかにも特殊加工されているであろう鍵をポトンと落として握らせた。

「この家の鍵？」

「そう。今日からここが由華ちゃんの家だからね」

嬉しそうに微笑み私を抱きしめるけど、引っ越しともなればいろいろと大変なことになるじゃないか。

「こんなことしてる場合じゃないでしょ」

私は蒼空の胸を押して腕の中から逃れた。

「解約手続きや引っ越しの手配もしなきゃいけないのよ？いろんな手続き大変なんだから」

急に『ここが家だよ』といわれて『わかった』というほど結婚引っ越しは簡単じゃないのだ。
< 51 / 64 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop