カモフラ婚～CEOは溺愛したくてたまらない～
出会った時から思っていたけれど、どうも蒼空は物事を楽観視する癖があるようだ。

「何の問題もないから安心して？引っ越しの手続きは全てこっちでやっとくから」

「そんな簡単なものじゃないでしょって言ってるの」

「だから大丈夫だって言ってるの」

蒼空は私の言葉を繰り返すようにおどけて見せた。

「手続きは全てこっちでしておくよ。荷物の搬入も手配しておく。すぐに動いてくれる伝手があるからね」

そうだった。

建築関係の仕事をしている蒼空には、こういう伝手はきっとたくさんあるのだろう。

思いがけないスピードで事が運ぶことに少しの戸惑いはあるけれど、私に不利益が生じるようなことはないだろう。

「じゃあ、それは蒼空に任せるわ」

私がそう言うと、蒼空は嬉しそうに微笑んだ。

「由華ちゃんの夫としての初仕事だね。すぐに終わらせる」

そう言うと蒼空は、PCでささっと作業すると、「明日の午後には引っ越し業者が入るように手配したからね。うちと被る家財道具なんかは処分しても大丈夫？」

悩んでみたけれど、見た感じ、ここにあるものの方が私の物よりも数倍いいもののようだ。

愛用品ではあるけれど、特別な思い入れがあるものではない。

「ありがとう。お願いします」

しばらくここで夫婦生活をしていくのだからと、私は思い切って決断した。
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