《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語
「お、おい、まさか····」
「え、隊長?!」
「グランさん?!」

 日が昇りきる前に俺は騎士団宿営地に着いた。
騎士団は5つの隊で構成されていて、王都と4つの領に騎士団は駐屯している。
今回は任務で別の騎士隊と合同調査をしていた。

「ウェストミンスター!
生きてたのか!」
「第4隊隊長、団長はいるか?」
「あぁ、ひとまず中に」

 第4隊は魔術騎士が多く、彼は薄灰色の髪と赤目の兎属で巧みな戦術と魔術で隊長となった。
ちなみに俺の第5隊は諜報と暗躍に長けた騎士が多い。

「やはり生きていたか。
報告しろ」

 熊属で焦げ茶色の髪と目をしたベルグル=ドランク団長だ。
俺より背も高く鍛え上げた筋肉を分厚くその身に纏っている。

「はい。
商人達を追いかけ····」

 俺は事の顛末を話し、騎士2人の騎士証を差し出す。

「では連中はよりにもよって竜笛で青竜を小飼にし、2頭も魔の森に放ったのか。
青竜の性質も考えず何と愚かな」
「俺達が連中を追い詰めた際、森から弾き出されるように出てきた青竜は2頭共手負いとなっていました。
出てくるまでに30分も経っていなかった事から、森の中には力の強い魔獣がいるのは間違いないかと」
「恐らく魔の森の主だろう。
にしても青竜を2頭も短時間で退けるとはな。
お前達第5隊、第4隊の中で屈指の3人を編成した隊が全滅状態になった事を考えても、そら恐ろしい。
旅の魔術師が運良くお前の致命傷を治癒したとはいえ、そうでなければお前も死んでいた。
隊を全滅させた責任は編成した団長である俺にある。
お前達があの時青竜達を討伐していなければ、下手をすれば近くの町が壊滅したかもしれん。
手負いの竜は餌を求めて暴走する。
隊長として部下の死に責任を感じるかもしれんが、よくやった。
お前の判断は間違っていない。
現場の惨状を見ても死力を尽くしたのは容易にわかる。
お前の血が大量にこびりついた折れた大剣に、仲間達の無惨な遺体が物語っている。
魔術師が特定できれば礼を言いたいが、本当にわからないのか?
恐らくかなりの実力を持った魔術師だろう。
遺体は1人ずつ魔物避けの布を被せられ、盗難防止にか魔石を使って騎士以外入れない結界が周囲に張られていた。
遺体もバラバラに散っていた筈だ」
「そう、だったんですか」

 一瞬、言葉につまる。
レン、お前はそんな事をしてくれてたんだな。

「すみません、団長。
俺も気付いた時には魔の森に張ったテントの中でした。
魔物避けや気配隠しを使っていたようなので、魔獣にも気付かれず3日間眠り続けたと聞いています。
礼はいらない、自分の事はなるべく他言無用にと懇願され、近くの町でその者が必要だと言った最低限の物だけ揃え、礼として無理矢理持たせました。
魔術師はずっとフードを被っていたのでどんな風貌かはわかりませんし、もしかしたら脛に傷を持つ身かもしれません。
俺にとっては恩人になるので、詮索もしませんでした」
「そうか。
お前の報告も持ち帰った証拠も有益だった。
騎士団をあげて元凶を叩き潰す。
決行する時までお前は宿舎に戻って体を休ませ備えろ」

 団長に退出の礼を取り、出ていく。
やはりレンからもたらされた情報と証拠は有益だったか。

「しかしなぁ、まさか青竜の胃から商人の遺体を抜き取ってあったとはなぁ····」

 胃酸で表面が溶解した亡骸と異臭を思い出して思わず口元に手をやったのは仕方ないと思う。
獣人の鼻はかなり利くが、あの臭いは人属だって相当なもののはずだし職業柄色々見てきた俺でもあの遺体はなかなかのものだと思ったが、本人はケロッとして最後は黒竜が黒い炎で一瞬で炭化していた。
俺の番はもしかしたらちょっとだけえげつない子なのかもしれない。
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