《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語
「何故、月夜花を貴国が····」
「ワルシャマリ国にしか生息しないはずでは····」

 証拠を順序立てて突き付けていくと、次第に王弟と第2王子が驚愕し始めた。

「うちの騎士団団長と副団長が先日貴国が無断でサプライズと称して持ち込んだワイバーンに連れられて魔の森に入ってしもうてなぁ。
幸い無事に帰って来られたから良かったものの、貴重な人材が失われず胸を撫で下ろしておったのだ。
騎士としては致命傷になるほど大怪我を負っていたと聞いた時には心配で胸が締め付けられる思いであったが、運良く治療できたようじゃしな」

 げ、一瞬だけど陛下が殺気飛ばしたぞ。
うわ、王子ちょっと震えてないか。
くくっ、ざまあみろとしか思わないけどな。

「それでじゃ、なんとその2人がそこに咲いておったのを興味本意で摘み取って持って帰りおった」
「そうなんですよ。
貴国から事前連絡の無かった献上という名目で船の外飼いしていたワイバーンが何故かワルシャマリに行こうとしたみたいなのですが、何故でしょうね?
幸いと言うべきなのか不幸にもと言うべきなのか、民のいる町を抜けた魔の森でワイバーンと共に落ちたのでもちろん我が国の宝である民に被害は無かったのですがねぇ。
落ちた場所がまさか、かの有名な黒竜を主とする魔の森だと知らせを聞いた時には本当にゾッとしました。
()()()()強力な魔物避けを持っていたから良かったものの、()()()()死んでいたでしょうねぇ」

 援護射撃は王太子だ。
何か嬉々として喋りだしてないか。
部分的にちょこちょこ強調した言い回しとか、めちゃくちゃ嫌味ったらしいな。

 2人とも金髪に緑の目をしていて顔立ちも精悍だ。
その2人がそれとなく獣気使って威圧した挙げ句にちょこちょこ殺気も混ぜこむとか、あの王弟も王子も災難だな。
2人共青くなって冷や汗かいてるけど、威圧を受ける訓練とかあっちの王族はしないのか?
こっちの国では王族なら幼少期教育で普通に訓練させられるんだが。
というか脇汗凄いぞ。
どっちも腕に滴り始めてるじゃないか。
まぁ下手したら俺の可愛いレンに何かしらあったかもしれないから同情は全っ然しないけど。
むしろどうせなら陛下達にはもっとやれと言いたい。
俺の幼少期より手温いだろう。

 にしても俺は昔からこの父と長兄が苦手だ。
腹に一物ありすぎんだよ。
この父にしてこの子あり、だ。

「ところで貴国から我が国に届いた最初の書簡なんじゃが、どうも字にいつもの覇気が感じられん。
貴国の王は病気でもしたのかのぅ?」
「い、いえ、我が国の陛下は息災です」
「そうか、あまりに心配してしもうたわ」
「さようなお心遣い、いたみ····」
「そこでのう、風を使って便りを飛ばしてみた」
「なっ?!
父上にですか?!」

 王弟の言葉を遮った陛下に第2王子の顔が青いのを通り越して白くなる。
心なしか震えが大きくなったな。

「どうされた、王子。
そのように顔色を青くしたり、白くしたり。
もしやまだ体調がすぐれぬか?
たまたま月花も採取したようだ。
念には念を入れて飲んで解毒されてはいかがか?
そなたの兄上とその友人達も今解毒しておるぞ。
すぐにでも正気を取り戻されよう」
「な、兄上が、正気、に」

 もう確実に誰が見ても震えだした。
獅子属はそういうの見たら追い詰めたくなるが、こういう時の兄上は更に酷いから逆効果だぞ。

「もちろん貴国の()()()とはいえ、我が国で起こった事。
回復に向けて誠意努力をするのは至極当然であろう?」
「そうじゃぞ。
気にせず甘えれば良い。
それよりな、先ほどジャカネスタ国王より直々の便りが届いた」

 ほれ、ここにとジャカネスタ国王の刻印を刻んだ蝋封を押された封筒をヒラヒラと見せつけてから陛下がナイフで封を開け、手紙に目を通す。

「ふむ、なるほど。
要点をまとめるとのぅ····」

 神妙な顔つきをしたと思ったら、狩りをする獣のようにニヤリと不適に笑う。

「そなたらは謀反人である故に手数をかけるが捕らえて引き渡せ、と」

 そう言って右手を上げ、人差し指で捕らえよ、と軽く指差す。
第1騎士隊が前に出て謁見の間から2人を引きずって行った。
既に放心状態だったので全くの無抵抗だ。

「さて、詳しい内容は後日更に詳細を詰めてドランク団長より周知させる。
此度の早期の解決に尽力した者達よ、大義であった。
これより建国祭の開始となる。
気を引き締め持ち場へ戻れ」

 王太子がそう言うと、陛下と団長と共に謁見の間を後にした。

 そうして3日間の祭りが始まり、自他国合わせて王族の警備に俺達は明け暮れたのだった。
次の建国祭は1日だけでも休みをもぎ取って俺の小さな番を腕に乗せて一緒に回ろうと密かに誓った。
顔が弛んだ所を運悪く副団長に見つかり何か気の毒な物を見るやうな目付きになったが、無視しておいた。

 あれから2週間経ち、ジャカネスタ国以外の来賓は自国の帰路についた。
再び隊長会議が開かれ、あの時の王太子の言葉通りに団長から説明を受けた。
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