孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「でも……それこそ、院内の誰かって感じじゃないですか?」


中谷さんが私をよけて身を乗り出し、操に訊ねる。


「プライベートで出会った人かもよ?」

「ええ~。もしかして霧生先生って、わりと恋愛にアクティブなのかなあ」


霧生君を話題にする中谷さんと操に挟まれ、居心地悪い。
私は一心不乱に手術看護計画を立てることで、テーブルを行き交う霧生君の話題に巻き込まれないように努めた。
やがて、時計が十一時を回り、皆がそれぞれ昼食休憩に入り始めると。


「さて、っと」


操が、パソコンのエンターキーをやけに強く打って声を出し、


「霞、ランチ行かない?」


サッと立ち上がって、私を見下ろした。


「っ、え?」


私は作成途中の看護計画から顔を上げ、彼女を見上げる。
バチッと目が合うと、操は腕組みをしてにっこり笑い――。


「約束したでしょ。じっくり聞かせてもらうって」

「…………」


私は無駄に目を泳がせたものの、もはや逃げ場はない。
操に話す覚悟はしてあったし、多分彼女はとっくに気付いてる。


「はい……」


私は肩を落とし、大人しく頷いた。
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