孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
操と二人で職員食堂に赴き、それぞれ食べたいもののカウンターに並んだ。
先に席に座った私が、そこはかとない緊張で肩に力を込めていると。


「霞。それで足りるの?」


テーブルの向かいに立った操が、私のトレーを見て目を丸くした。
私のチョイスはかけ蕎麦だ。
トッピングは、なにもなし。


「ちょっと……お正月食べすぎてね」


ぎこちなく笑って答える私とは真逆に、彼女のトレーにはがっつり牛丼セットがのっている。
出勤前にコンビニで買ってきたのか、ロールケーキのデザート付きだ。
操は椅子を引いて腰かけると、食い気味に身を乗り出してきた。


「幸せ太り?」


水の入ったコップを口に運んでいた私は、思わずブッと吹き出した。


「みっ、みさ……」

「無駄に慌てないの。オンコール明けで会ったイケメン、霧生先生だったんでしょ?」


ゴホゴホと噎せ返る私に構わず、操は味噌汁で箸を濡らす。
私は水を一口飲んでから深い息を吐き……。


「それは……その通り」


卓上から一味唐辛子を取って蕎麦に振りかける。


「それは? 限定的ね。その通りじゃないのはなに?」


牛丼に箸を入れながら訊ねてくる彼女の前で、辺りに視線を走らせた。
まだそれほど混んでないけど、病院の職員食堂の混雑ピークは不規則だ。
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