孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
このままでも、ずっと一緒にいれば、あんな風になれるかな。
『結婚』の形にこだわってるようで、自分が気恥ずかしい。
「さ……さーて。そろそろ戻らなきゃ」
私は両手を頭の後ろに回し、グンと胸を張って誤魔化した。
無駄に大きな一歩を踏み出し、スタスタと歩き出すと……。
「霞」
後ろから静かに呼ばれ、ギクッとして足を止めた。
何故か、警戒心が込み上げてくる。
ゴクッと唾を飲んでから、恐る恐る顔だけ振り向かせた。
颯汰はまだ正面玄関に佇んでいた。
白衣のポケットに両手を突っ込んで、まっすぐ私を見つめている。
視線がぶつかるのを待って、ゆっくり唇を動かし――。
「契約結婚は、終わりにしよう」
一瞬強い風が吹き、キャンパスの所々に植えられた木々の梢を鳴らす。
ザアッという風音に掻き消され、彼の声が全部聞こえなかったのかと思った。
「……え?」
颯汰の短い髪が、風で乱れる。
私はぎこちなく足を引き、身体ごと彼に向き直った。
「終わり? 終わりって……」
聞き取れた言葉を繰り返して戸惑う私から、颯汰が顔を伏せる。
「これから五十年六十年先、僕と君も、酒巻さんみたいな夫婦になれるように」
噛みしめるように言って、目尻を下げて微笑んだ。
『結婚』の形にこだわってるようで、自分が気恥ずかしい。
「さ……さーて。そろそろ戻らなきゃ」
私は両手を頭の後ろに回し、グンと胸を張って誤魔化した。
無駄に大きな一歩を踏み出し、スタスタと歩き出すと……。
「霞」
後ろから静かに呼ばれ、ギクッとして足を止めた。
何故か、警戒心が込み上げてくる。
ゴクッと唾を飲んでから、恐る恐る顔だけ振り向かせた。
颯汰はまだ正面玄関に佇んでいた。
白衣のポケットに両手を突っ込んで、まっすぐ私を見つめている。
視線がぶつかるのを待って、ゆっくり唇を動かし――。
「契約結婚は、終わりにしよう」
一瞬強い風が吹き、キャンパスの所々に植えられた木々の梢を鳴らす。
ザアッという風音に掻き消され、彼の声が全部聞こえなかったのかと思った。
「……え?」
颯汰の短い髪が、風で乱れる。
私はぎこちなく足を引き、身体ごと彼に向き直った。
「終わり? 終わりって……」
聞き取れた言葉を繰り返して戸惑う私から、颯汰が顔を伏せる。
「これから五十年六十年先、僕と君も、酒巻さんみたいな夫婦になれるように」
噛みしめるように言って、目尻を下げて微笑んだ。