孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
主に体型面の印象が強い私にとっては、今の彼と昔の彼では、連想ゲームにすらならない。


「まあ、とにかく……。昨夜逃げたのは、僕が誰だかわかってなかったからか」


彼は食い入るように目を凝らす私に構わず、眼鏡をかけ直してしまった。


「あっ……」

「今はこうして、君の方から話しかけてきた。僕が元同級生だと知れば、今度は逃げずに話の続きを聞く気ある?」


せっかくの美顔を隠すなんてもったいない!と、無意識に一歩踏み出していた私を、わざわざ背を屈めて覗き込んでくる。


「つ、続き?」


心臓がドキッと跳ねたせいで、聞き返す声はひっくり返ってしまった。
彼は気にせず、「そう」と相槌を打つ。


「君も、今のオペで今日は終わりでしょ。着替えて、職員通用口集合」


男らしい薄い唇で内緒話みたいにコソッと告げて、悠然と背を起こした。


「は……集合?」

「じゃ、後ほど」


昨夜の危険人物がイケメン天才脳外科医で、しかも中学時代の元クラスメイトだった……という怒涛の衝撃波について行けずポカンとしている間に、彼は私の横を颯爽と通り過ぎていた。


「後……え? あっ!」


私が我に返って目で追った時、彼はエレベーターホールに姿を消してしまった。
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