孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
そして、オペ終了からかれこれ三時間後。
私は昨夜と同じ居酒屋のカウンター、昨夜とは逆サイドの左端の席に、彼……霧生先生と並んで座った。


私がオーダーしたのは、飽きもせずに紫蘇焼酎。
霧生先生は、生ビールの中ジョッキだ。
男らしく豪快に喉仏を動かして、一気に三分の一を飲み干し、


「じゃあ、早速続きから始めようか」


ジョッキをカウンターに戻し、おもむろに切り出す。


「茅萱さん、僕と結婚……」

「あ、ああああのっ!」


私は肩を力ませ、彼の言葉を先回りして遮った。


「正直突っ込みどころ満載すぎて、私も混乱してるんですけど……それを質すより、はっきりお伝えした方が早いと思うので」


早口で捲し立ててから、彼に視線を流した。
霧生先生がちょっと不服そうに唇をヘの字に曲げながらも、黙っているのを確認して、膝に両手を置いてギュッと握りしめる。


「昨夜剛に振られて、私は恋愛に向いてないって痛感したんです。世のため人のためにも、もう恋なんかしない」


言葉を選んで口にしたものの、どこかたどたどしくなった。
正直、もうこの先、恋愛に繋がる出会いも機会もないと思うし、もしあったとしても、相手にまた鬱陶しいと思わせてしまうんじゃ……と、臆病になっているのもある。
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