孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「これでも結構めげてるんです。だから今、悪い冗談を笑って流せるほど心広くなれないので、元クラスメイトをからかってるだけなら、やめてほしいです」


曖昧に揺れる心を隠し、私は唇を結んで俯いた。
霧生先生は頬杖をつき、私の横顔を斜めの角度から見据えていたけれど。


「茅萱さん。どうしてまだ僕に敬語使うの?」

「……は?」

「もしかして。『元クラスメイト』って言いながら、まだ僕が霧生颯汰だって信じてない?」


突然の話題転換に頭がついて行けず、私は一瞬口ごもった。
そして、勢いよく首を横に振る。


「そんなことない。でも、すごい立派になっちゃって、気安くタメ口叩くわけにも……」

「僕が立派? どこが」


私が喋る途中でハッと浅い息を吐き、自嘲気味に呟く彼にギクッとした。


「霧生……先生?」


躊躇いがちに呼びかけると、霧生先生は物憂げにかぶりを振って……。


「とにかく。僕は正真正銘、君と同級生の霧生颯汰だし、先生なんて呼ばなくていい」

「えっ。でも」

「なんなら、命令しようか? 僕のことを先生と呼ぶな。こうして二人で話してる時、敬語で話したらペナルティ」

「っ、えええっ……!?」


やけに明るく声を転調させて強引に出る彼にギョッとして、私は声をひっくり返らせた。
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