孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
改まって両腕を伸ばし、私を抱き寄せた。
肌触りのいい柔らかいニットに、顔が埋まる。
彼の速い心音が、私の鼓膜を直接くすぐった。
「き、霧生く……?」
彼に対して人見知りに近い感覚に陥っていた私は、戸惑いながら呼びかけた。
霧生君は返事をせず、私をギュッと抱きしめてから抱擁を解くと。
「……離婚届は?」
私の肩に両手を置いて背を屈め、わざわざ目を合わせて訊ねてくる。
問われた意味を理解して、私はダイニングテーブルに顔を向けた。
彼もつられてそちらに目を遣って、つかつかと歩いていく。
私が無意識に息をのんで見守る中、テーブルの前で足を止めた。
私が置いた白い封筒を手に取り、離婚届を摘まみ出して検める。
そして、再び私の方に戻ってきて。
「これは、いらない」
私の顔の高さに持ち上げて、ビリッと乾いた音を立てて引き裂いた。
「っ、霧生く……!」
あ然として、次の瞬間、弾かれたように上擦った声をあげる私を、悠然と見下ろし……。
「僕は、離婚しない」
「は……」
――なにを言われたのか、わからない。
大きく目を見開いて絶句する私に。
「君を、僕だけのものにする。君には一生僕について来てもらう」
決意のこもった力強い口調で言って、粉々になった離婚届をヒラヒラと床に落とした。
肌触りのいい柔らかいニットに、顔が埋まる。
彼の速い心音が、私の鼓膜を直接くすぐった。
「き、霧生く……?」
彼に対して人見知りに近い感覚に陥っていた私は、戸惑いながら呼びかけた。
霧生君は返事をせず、私をギュッと抱きしめてから抱擁を解くと。
「……離婚届は?」
私の肩に両手を置いて背を屈め、わざわざ目を合わせて訊ねてくる。
問われた意味を理解して、私はダイニングテーブルに顔を向けた。
彼もつられてそちらに目を遣って、つかつかと歩いていく。
私が無意識に息をのんで見守る中、テーブルの前で足を止めた。
私が置いた白い封筒を手に取り、離婚届を摘まみ出して検める。
そして、再び私の方に戻ってきて。
「これは、いらない」
私の顔の高さに持ち上げて、ビリッと乾いた音を立てて引き裂いた。
「っ、霧生く……!」
あ然として、次の瞬間、弾かれたように上擦った声をあげる私を、悠然と見下ろし……。
「僕は、離婚しない」
「は……」
――なにを言われたのか、わからない。
大きく目を見開いて絶句する私に。
「君を、僕だけのものにする。君には一生僕について来てもらう」
決意のこもった力強い口調で言って、粉々になった離婚届をヒラヒラと床に落とした。