孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
ただ一人、さりげなく割って入ってくる女子がいた。
それが、茅萱さんだった。


『ねえ、そこの三人〜。今日、英語の訳当たるんじゃない? 準備しなくていいの?』

『げっ、そうだった!』


彼女が声をかけてくると、女どもは我に返り、僕に絡むのをやめて散っていく。
そんなことが何度か続き、助けられているのか、と理解が通じた。


それからなんとなく気になって、目で追うようになった。
たまに目が合うと、一瞬きょとんとしてから、ニコッと屈託ない笑顔を浮かべてくれる彼女に、僕の心臓は跳ね上がって反応した。
それが好意という感情によるものと認識するまでに、それほど時間はかからなかった。


僕は、決死の思いで告白した。
しかし、軽く受け流されて終わった。
そのすぐ後から、僕とは正反対で、ひょろ長い体型のバスケ部キャプテンだった男と、茅萱さんが一緒にいるのを、度々見かけるようになった。


ああ……結局彼女も、あの女どもと同じだ。
『キモデブ』と口に出してからかうか、からかわないかの違い。
こんな僕を好きになったりはしない――。


そう納得したら、僕の中でなにかが急速に冷めていった。
茅萱さんはどういうつもりか、教室では変わらず僕を助けてくれたけど、僕はもう目で追うこともしなかった。
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