婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
智明 side

「あ、智明じゃない! 智明も大変ね、あんなくそ不味そうなご飯を毎日食べなきゃならないなんて」

「中村、なんでお前がここにいるんだ」

「なんでって、私が光明の彼女だもの。あ、息子さん生まれたんだってね、触ってもいい?」

「触らないで!!」

「蛍、こっちおいで。大丈夫、明将には指1本触らせないからね」

「う…ん…」

今まで見たことがないような剣幕でそう怒鳴る蛍を見て、一刻も早くこの家から中村を出さなければと頭をフル回転させる。

それにしても光明の奴、なんでよりにもよって中村と付き合ってんだよ。

「兄さん、蛍。ちょっといいか? 明将ももちろん連れて来ていい」

光明にそう言われ、俺は蛍と明将を抱きしめたまま寝室に移動した。

「おい光明、なんでお前あんな奴と…」

「俺は好きで付き合ってるんじゃない。あいつと付き合わなければ、蛍と明将に手を出すと脅された」

「え…そうなの…?」

「あぁ。それで、一度でいいから兄さんが住んでいる家を見たいって駄々を捏ねられた。見せてくれなきゃ俺に無理矢理犯されたと会社中に言いふらすと言われてしまって…」

「大丈夫だ。そこまで行くと流石にやりすぎだ。中村には異動してもらう」

「助かる…ありがとう」

とりあえず今は穏便に乗り切るが、ここまで俺の家族を苦しめたことを後悔させてやる。

俺は心の中で誓った。
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