婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
それから、私は黙々と料理を作り智明はそれの手伝い、光明くんには明将を見てもらっていた。

中村はというと、スマホで何かを一生懸命調べているようだった。

「光明くん、会社の人から電話」

「え、俺の携帯には何も来てないけど?」

「私に来てるの! 一緒にいるだろうから、代わってほしいって言われた」

「はぁ? なんだよそれ」

不審に思いつつも光明くんは電話に出て、私たちも料理に熱中していたし、完全に油断していた。

ふと、玄関のドアが閉まる音がして私と智明は顔を見合せた。

「ねぇ、今誰か来た?」

「いや、来てないはずだ。おい、中村と明将はどこだ?」

「まさか、連れて行かれた訳じゃないよね?」

ドクドクと心臓がうるさいくらいに脈打ち、脂汗が滲んでくる。

バタバタと玄関に向かうと、そこにはもう中村さんの靴がなくて。

「さっき出たばかりだから、そんなに遠くに行ってないはずだ。手分けして探そう」

「明将…無事だよね? 生きてるわよね?」

「大丈夫だ。絶対無事だから、まずは中村を探し出して明将を連れ戻そう」

「兄さん、蛍、どうしたの?」

「光明、中村に明将が誘拐された。お前も力を貸してくれ」

「は? 誘拐って、あいつ…」

智明はパニックになる私をなだめつつ、光明くんと共に明将の行方を追った。

神様どうか、明将を守ってください。
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