婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
中村 side

ついに智明の子を手に入れた。

ずっとずっと、智明との子供が欲しかった。

なのに智明はいきなり現れた蛍とかいう女と結婚し、子供まで作った。

智明のお嫁さんになるのは私なのに、なぜあの女が智明の隣にいるの?

そう考えるとふつふつと怒りが込み上げてきて、いつしか2人の子供を誘拐するという計画を考え始めるようになった。

「ふふふ…今日からあなたは私の子よ、明将」

あの女は今頃、どうしているのだろう。

パニックに陥り、泣き叫んでいるのだろうか。

それとも、放心状態で何も考えられなくなっているのだろうか。

あの女が苦しむ姿を想像すると、自然と笑いが込み上げてくる。

自宅に戻り不敵な笑みを浮かべながら部屋の中をウロウロしていると、光明から電話が来た。

この男もなかなかにいい遊び相手だった。

私は智明に近づきたくて事実上は光明の彼女として、この時を狙っていた。

そんなことは露知らず、光明は私が本気で自分のことを好きだと勘違いして尽くしてくれた。

本当に哀れで、最高に面白かった。

<もしもーし、光明くんから電話なんて珍しいじゃない>

<てめぇ今どこにいんだよ。なぜ兄さんと蛍の子を攫った>

<ふふふ、それは教えられないけど、返してほしかったら私が指定する場所に、あの女を1人で来させてよ。そしたら返してあげなくもないよ>

<ちょ、待てよ!>

そんな光明の声が聞こえたが、私は無視して電話を切った。

もっと面白くなりそうね。
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