婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
結局その日は蛍が部屋から出てくることはなく、俺は一旦家に帰った。

お義父さんとお義母さんは夜も遅いし泊まってもいいって言ってくれたけど、俺はそれを丁重にお断りしてその足で実家に向かった。

「ただいま。光明、父さんと母さんいる?」

「まだ起きてると思うけど。てか、兄さん1人?」

「その件でちょっと話したいことがあって来た。光明も聞いてくれ」

「分かった。風呂だけ入ってくるからちょっと待ってて」

「おう、急がなくていいからな」

実家に帰ると幸いみんな揃っていて、まとめて事情説明ができそうで安心した。

「お待たせ。で、話って?」

「俺が大学んときの同級生の中村って覚えてる?」

「えぇ、あの色々嫌がらせとかしてきた子よね? たしか、うちの会社で働いてたわよね?」

「あぁ、うちで働いてる。今日、蛍とモーニング食いに行ったカフェでばったり会って、根も葉もないこと言われて。それが原因で、蛍は実家に帰っている」

「智明、もっと具体的に説明しなさい。それだけじゃ、我々もどう動いていいのか分からない」

「てか兄さん、蛍のこと泣かせたの? え、俺が貰うよ?」

「光明、あなた何言ってるの。とりあえず、もっと具体的に説明してくれる?」

父さんも母さんも中村の性格の悪さを知っているからこそ、真剣な顔でそう言った。
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