婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
夕ご飯を食べながら、私からもお父さんとお母さんに事情をきちんと説明した。

智明だけに説明させるのは卑怯な気がしたし、私の口からも言うべきだと思ったから。

｢蛍は、中村さんを信じる？ それとも、智明さんを信じる？｣

お母さんからの問いに、私は少し戸惑った。

智明のことを全面的に信じてあげたいのは当たり前だけど、中村さんの言うことも少し引っかかってて。

だから、即答することができなかった。

｢蛍がどっちも信じられないならそれでもいいと思うわよ｣

｢うん⋯ありがとね、お母さん｣

｢それでだな、蛍。智明くんから電話があって、明日改めて会いに来たいそうなんだが⋯｣

｢体調悪いから会えないって言っといてくれないかな｣

｢そうか、分かった。明日はゆっくり休みなさい｣

｢ありがとう｣

体調悪いのはあながち間違いじゃないし、嘘はついてない⋯よね？

体調悪いことを隠してる時点で怒られそうだけど、今は話す気にはなれない。

｢おやすみなさい｣

｢あぁ、おやすみ。ゆっくり休むんだよ｣

｢おやすみ、いい夢を｣

お父さんとお母さんが寝る前にかけてくれる言葉は、小さい頃から変わらない。

その言葉に安心して、私は眠りについた。
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