溺愛ハンティング
 そして顔合わせの当日――。

「……本当だったんですね」

 高砂屋に姿を見せた八木さんに名刺を渡すと、何度もそれと私の顔を見比べられてしまった。

「一昨日はたいへんお世話になりました」
「いや、こちらこそ。それにしても見違えたな」

 確かに今日はちゃんとメイクしている。
 髪もハーフアップにして、シルバーのピアスをつけ、黒のパンツスーツを着ているから、そう言いたくなるのもわかる。

 だけど私も、そっくり同じ感想を返したいと思った。

 今日の八木さんはそのまま広告にしたいほど決まっていたのだ。

 オフィシャルな場を意識したブルーグレーのシングルブレストのスーツと淡い水色のバンドカラーのシャツ――小さめの頭部としっかりした体幹、長い手足はまさに黄金比で、メンズモデルの中でもここまでスーツが映える人はなかなかいない。

 こんな彼にはいったい何を着せたら……?

 うっかり見とれていると、八木さんがおかしそうに笑った。

「改めてよろしく、わか、いえ、鳴瀬さん」
「こ、こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。本日はお時間をいただきまして、どうもありがとうございます」

 いけない。また、例の「やばい目つき」をしていたのかもしれない。

「では、どうぞこちらへ」

 私は小さく咳払いして、八木さんを来客用のミーティングルームへと案内した。
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