因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「申し訳ありませんが、パーティーの後は妻に――」

 空木先生を見下ろし、毅然とした態度で告げようとした瞬間だった。

 会場の照明がいっせいにフッと落ちて辺りが真っ暗になった。

 参加者たちがどよめく中、会場の出入口でホテル従業員と思われる男性が大声を出す。

「皆様、落ち着いてください! 大雪により停電した模様ですが、間もなく自家発電に切り替わります」

 大雪による停電、か……。原因が判明して少々落ち着きを取り戻した直後、腕にあたたかいものがギュッと絡みついてきた。

「醍醐先生、怖いです……っ」

 暗いので姿はよく見えないが、空木先生の猫なで声である。

 本能的に、ぞわりと肌が粟立った。緊急時とはいえ、気安く触れないでほしい。

「……そうだ、怖いのなら」

 なんとかこの場を切り抜けたくて、俺は脇に挟んでいたシンプルなクラッチバッグからスマホを取り出す。

 自室で文机の下に小さなものを落とした時だったか、和華が教えてくれたのだ。こんな時に役立つ便利な機能があると。

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