因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
あまりの決断の早さに、一色さんは喜びよりも戸惑いが大きいようだった。
商売のプロである彼にしてみれば、うまい話には裏があると思うのが当然だ。
「決して安請け合いしているわけではありません。しかし、もう少しお考えになりたいのであればまた出直します」
「あっ、いやいや、ありがたいんです、もちろん! ……娘の和華は年頃だってのに、嫁に行くどころかデートのひとつもしない。その理由が、この店と俺たち親のことが気がかりだからじゃないのかなって思うと、不甲斐なくて」
一色さんが、苦笑して頭をかく。
思いがけず和華の現状を知った俺は、途端に複雑な心持ちになった。
和華は俺より四つ年下。まだ結婚を急ぐような年齢ではないが、こうして父親である一色さんは彼女を心配している。
幼い頃から俺を励まし続けた、優しい和華のことだ。両親と店を心配する気持ちは、もちろんあるだろう。
しかし、彼女が恋愛から縁遠くなった理由は、果たしてそれだけか。
俺が負わせた火傷が関係ないとは、どうしても思えない。
だとしたら、店を援助するほかに、俺が和華にしてやれることはひとつ――。