因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
醍醐家を去り、自分の力でまっとうな職を探し、ひとりで生きる。それが、昨日ひとりで香間にこもっていた彼が出した答えだ。
私や伊織さんは反対だったけれど、太助くんはその決断を頑なに変える気はなかった。
光圀さんは両手の荷物を運転手に預け、静かに太助くんを見下ろす。
そして、袴が汚れてしまうのも構わず地面に片膝をつくと、おそるおそる顔を上げた太助くんと目線を合わせた。
「太助。香道は、つまらなかったか?」
「えっ……?」
「最初は食べるため、寝る場所を確保するためだったとしても……俺にはお前が香道を楽しんでいるよう見えた。それが師としては単純にうれしかったが、俺の勘違いだったか?」
光圀さんは、まっすぐに太助くんの瞳を覗いている。
勘違いなんかじゃない。付き合の浅い私だって、そう思う。
だって、ここへ来たばかりの時、ほんの少しだけでも香道について語ってくれた時の彼は、とても生き生きとした目をしていたもの。