因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
小さな次期家元

 光圀さんと離ればなれの生活を送るようになって、二週間余り。

 悪阻が軽くなったというよりは、なにに気をつければ症状が出づらいか、自分なりに分析できるようになってきたので、二十四時間トイレにいる生活からはなんとか脱却できた。

 今日は結婚記念日なので、光圀さんが来てくれる約束になっている。

 いつもは部屋着のまま一日を過ごすけれど、久々にちゃんとした服に着替えた。

 といっても、ざっくり編みのニットワンピースにタイツを合わせただけの、楽ちんな格好。

 メイクはどうしても香りが気になるので、眉毛だけササっと書くだけにとどめた。

 もうすぐ、約束の午後三時。ソワソワしながら部屋の窓から外を眺める。

「あっ、来た……けど、えっ? 光圀さん……?」

 家の前に、醍醐家の高級車が止まったまでは予想通り。しかし、そこから出てきた人物は、光圀さんのようで光圀さんでない。

 いや、間違いなく光圀さんではあるのだけれど……。

 禅問答のような思考で頭がいっぱいになっているうちに、家のチャイムが鳴る。

 間もなく母が玄関で応対する話し声が聞こえた。いよいよ対面だと思うと落ち着かず、お気に入りのクッションを抱きしめながら部屋の中をぐるぐる歩く。

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