因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 そして同じく困っているのが、近頃の自分の寝つきの悪さだった。

 和華の隣で布団に横になり、目を閉じる。ひとりの時はすぐに眠りにつくことができたのに、和華がいるとなぜか目が冴えて、何度も寝返りを打つ羽目になる。

 やっぱり、彼女に対する罪の意識がそうさせるのだろうか……。

 だとしたら、甘んじて受け入れるしかない。

 眠ることを諦めた俺は夜通し和華の寝顔を見つめ、朝方にようやく少しだけ睡眠をとる。

 朝もスッキリ起きられずなんとなく悶々とするが、着物と袴に身を包めば、香道家としての自分になれるのだった。


 数日後の午後。外に出かける用事のなかった俺は、弟子たちとともに食堂にいた。

 テーブルに広げた資料を眺め、思わずため息をつく。資料はどれも、いくつかのネットメディアから『ぜひご出演の検討を』と頼まれた企画の草案だ。

【イケメン香道家、醍醐万斎の素顔に迫る】
【伝統を繋ぐ若き家元、その麗しき灰手前の所作】
【ぶっちゃけ、モテる職業その二十三――香道家】

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