因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 少々寒いけれど、今どきの人力車は床暖房完備。温かいひざ掛け毛布も借りられるし、冬の澄んだ空気を浴びるのも意外と気持ちがいいのだ。

「和華、思ったより元気ね」
「えっ?」

 人力車に乗ってすぐ、真っ赤な布の貼られた座席で隣り合う友人、貴英(きえ)に顔を覗かれ、きょとんとして瞬きをした。

 貴英は、小学校からの同級生。彼女の実家も、我が家と同じく商店を経営している。

 日本全国から買い付けたこだわりの和風小物を扱う店で、既製品のほか、ハンドメイドが得意な貴英自らが作ったアクセサリーも店頭に並んでいる。

 貴英の身長は一六九センチと長身で、ゆるくパーマをかけたロングヘアやぽってりと厚みのある唇がセクシーな、大人っぽい容姿である。

 もちろん男性からもモテるが、彼女はすでに既婚。結婚相手は同じく小学校からの付き合いである同級生・竹田兵吾(たけだひょうご)くんだ。

「結婚の内情を知る者としては心配してたのよ? 実家のために好きでもない相手……しかも半端なく上流階級の男性と結婚するなんて、いくら和華がお人好しでもつらいんじゃないかって」

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