因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
「旦那様から?」
「うん」
「もう、にやにやしちゃって。私が心配するまでもなく、旦那様にちゃんと恋してるのね」
貴英がからかうような目をして、私の顔を覗く。
恋……。そういえば、光圀さんと恋愛したいと意気込んで、一日一回以上のキスを彼に求めたり積極的に行動する割に、自分の気持ちについては深く考えていなかった。
最初は過去の罪で光圀さんを縛りたくない一心だったけれど、今ではそれ以上に、本物の夫婦になりたい気持ちが強い。
でも、それは恋愛感情かと聞かれると、どうなんだろう。
なにしろ本気で男の人を好きになった経験がないので、自分では判断できない。
「恋……なのかなぁ」
うーんと首を傾げる私に、貴英が呆れて苦笑する。
「そうやって自問自答するのは、たいてい相手に落ちた後なのよ。ま、もうちょっと恋の芽が育ったら、いくら和華でも自覚するわ。心の中、ぐっちゃぐちゃになるんだから」
「そっか、ぐちゃぐちゃ……。よく覚えておく」
貴英の脅しに神妙に頷いていると、人力車がゆっくり速度を落として停車した。
「お姫様方、目的地に到着しましたよ」
兵吾くんが見上げた先には、一軒の和食店。店に沿って【うなぎ】と書かれたのぼりがはためいており、思い出したようにお腹が鳴った。
「ありがと兵吾。仕事頑張ってね」
「おうよ。一式も、またな」
「うん、ありがとう兵吾くん」
私たちを下ろして軽くなった人力車を引いて、兵吾くんは颯爽と浅草の街に消えていく。
彼を見送ると、私たちは楽しみにしていたうなぎを食べるため、意気揚々と店の暖簾をくぐるのだった。