君しかいない

　つまらなくは無い。わたしには成瀬がいるし、買い物がしたければ成瀬と一緒に寄り道もする。飲みたければ帰宅後に成瀬とお酒を交わせばいい。その場合は酔わせた責任があるから、成瀬に泊まってもらうけど。

「うへっ、真尋さんの執事はプライベートに介入しすぎだよ」
「そうですか？　わたしが高校生の頃から成瀬とはこんな感じですけど」

　まぁ他の家のことは分からないけど、わたしと成瀬はこれが普通なのだ。昨日や今日知り合った他人にとやかく言われたくない。

「執事がベッタリしすぎることは、夫になる身として快く思えないな」

　左手を伸ばしてきた翔斗さんに右手をギュッと握られたので横を向くと、さっきまで笑っていた笑顔は消え、怪訝な表情を浮かべていた。

　ねぇ成瀬、わたしの夫になるであろう人から嫌な顔されたんだけど？　そんなにいけないことなのかな？　成瀬とわたしの距離が近いということは、信頼関係が成り立っているからなのに……ダメなの？