君しかいない
 こういう時の成瀬は、絶対に意志を曲げたりしないことを知っているから。素直に従うしかない。
 成瀬の愛車に乗せられ東堂家に戻る道中、未だ開いているブティックに寄り成瀬のブカブカなルームウェアから、今日着ていたものに近いデザインの服を選び着替え直し帰宅した。
 成瀬の車が門前で停り、外から後部ドアを開けられた。

「真尋様、ここから先はおひとりでお帰りください」
「部屋まで送ってくれないの?」
「申し訳ございません」
「いい、分かった!」

 なんなのよ、優しくしたり突き放したり。
わたし、成瀬に振り回されてばかりじゃない? 成瀬が何を考えているのか、手に取るように分かればいいのに。そうすれば、こんな苦しい気持ちにならずに済むのに。
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