君しかいない
男性は不気味な笑みをわたしへ向け、ナイフを振り下ろした。その瞬間、恐怖に耐えきれず身を縮め瞼をギュッと瞑る。
「真尋!」
わたしの身体は温かさに包まれ、ナイフの痛みでは無くズシリと重みを感じた。
覚えのある香りが鼻をかすめ、恐る恐る目を開ける。わたしを抱きしめ身を呈し助けてくれたのは、ここに居るはずのない成瀬だった。
「お怪我はありませんか?」
「嘘、なんで」
「屋敷に帰る途中、車の後部座席に忘れ物を見つけたのでお届け、に……っ」
「成、瀬?」
顔を顰めながら、成瀬はわたしを背中に隠すように立った。目に飛び込んだ成瀬の背中がいつもとは違っていることに気づき、血の気が引く。
いつもカッコよく着こなしているスーツも、その下に着ているシャツも切り裂かれ肌が露出している。しかもその背中からは出血し、白シャツが鮮血でどんどん赤く染っていく。
「ひっ、成瀬……血が」
「私は大丈夫です。真尋様、私から離れないでください」
「真尋!」
わたしの身体は温かさに包まれ、ナイフの痛みでは無くズシリと重みを感じた。
覚えのある香りが鼻をかすめ、恐る恐る目を開ける。わたしを抱きしめ身を呈し助けてくれたのは、ここに居るはずのない成瀬だった。
「お怪我はありませんか?」
「嘘、なんで」
「屋敷に帰る途中、車の後部座席に忘れ物を見つけたのでお届け、に……っ」
「成、瀬?」
顔を顰めながら、成瀬はわたしを背中に隠すように立った。目に飛び込んだ成瀬の背中がいつもとは違っていることに気づき、血の気が引く。
いつもカッコよく着こなしているスーツも、その下に着ているシャツも切り裂かれ肌が露出している。しかもその背中からは出血し、白シャツが鮮血でどんどん赤く染っていく。
「ひっ、成瀬……血が」
「私は大丈夫です。真尋様、私から離れないでください」