君しかいない
ナイフを持った男性は、震える両手で成瀬の血が垂れるナイフを握り刃をこちらに向け、再び襲いかかってきた。
空手黒帯の成瀬に正面から挑むなど無謀に近い。けれどそれは通常の成瀬に対してだ。今の成瀬は怪我を負っているうえに、背中にわたしを隠している分不利でしかない。
「僕の真尋さんを返せ!」
男性が突進してきた瞬間、何が起こったか分からないくらいのスピードで成瀬の身体がヒラリと舞い。男性は倒され、警備員に取り押さえられていた。
「成瀬っ」
振り返った成瀬はスローモーションのように身体を揺らせてわたしの元へ戻って来ようと歩き出したから。慌てて駆け寄り、倒れそうな成瀬の身体を抱き留めた。
「真尋さ……」
「喋らないで。どうしよう、成瀬……やだ。誰か、誰か救急車!」
成瀬に身体を預けられ、支えきれずにズルズルとその場に座り込む。手には成瀬の背中から溢れて止まらない血がベッタリとつき、動揺しながらも止血しようと着ていた制服の上着を脱ぎ傷口に当てた。
空手黒帯の成瀬に正面から挑むなど無謀に近い。けれどそれは通常の成瀬に対してだ。今の成瀬は怪我を負っているうえに、背中にわたしを隠している分不利でしかない。
「僕の真尋さんを返せ!」
男性が突進してきた瞬間、何が起こったか分からないくらいのスピードで成瀬の身体がヒラリと舞い。男性は倒され、警備員に取り押さえられていた。
「成瀬っ」
振り返った成瀬はスローモーションのように身体を揺らせてわたしの元へ戻って来ようと歩き出したから。慌てて駆け寄り、倒れそうな成瀬の身体を抱き留めた。
「真尋さ……」
「喋らないで。どうしよう、成瀬……やだ。誰か、誰か救急車!」
成瀬に身体を預けられ、支えきれずにズルズルとその場に座り込む。手には成瀬の背中から溢れて止まらない血がベッタリとつき、動揺しながらも止血しようと着ていた制服の上着を脱ぎ傷口に当てた。