婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
 
 あの日、鞄から教科書を取り出そうとしたらバラバラに引き裂かれた教科書が出てきたのだとごまかした。

 怪我だって、誰かとすれ違いざまに足と引っかけられたわけではなく、一人で歩いているときに、運悪く石に躓いて転んだ。それをフローラのせいにしただけ。

 いいえ、フローラがやったと断言したわけではなく、彼女がいたわ、見たわと匂せただけ。

 嘘を真実と思わせるための匂わせ。いざとなったら言い逃れができるものね。


 傷の手当てが済むとエマがわたくしの指に目を止める。

「素敵な指輪ですね」

 アメジストの深い紫に目を奪われて買ってきたもの。
 宝石は小ぶりなのが少し不満なのだけれど、わたくしのお小遣いで買えるのはこれが限界だった。でも美しい色合いにはとても満足しているわ。だって、レイ様の瞳と同じ色なんですもの。

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