婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「フローラが一番気がかりなのはビビアン様の事よね?」
名前が出た途端、ビクッと体が震えました。先ほども憎々し気に睨まれて体が硬直してしまったこと思い出して、恐怖に鳥肌が立ちました。私の尋常ならざる様子に気づいてくれたのか私の肩を抱きしめてくれました。
「大丈夫よ。さっき言ったでしょう? 彼女にはロジアム侯爵家から縁談が来ているの。両家とも乗り気なのも本当のことよ。近いうちに婚約が成立すると思うわ。だから、心配しなくてもいいのよ」
「……でも、レイ様に相応しいのは、自分だとおっしゃっていたわ」
あの雨の日に執拗なくらいにレイ様に固執していらしたから、彼との縁談があってもおかしくないと思っていました。
「そう。そんなことを。哀れね」
哀れ。
それがどんな意味合いを持つのか、私にはわからないけれど知ろうとは思いませんでした。
ロジアム侯爵家から縁談が来ていて纏まる方向で進んでいるのであれば、ビビアン様にとっても良いことなのでしょう。
ただ、レイ様への執念が怖かった。
だから、今日を最後に接点がなくなればいいのにと願いました。