婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

穏やかな日々

 
 天気の良い昼下がり。

 西の宮の一室で侍女達とのんびりとした時間を過ごしています。今日はみんなで刺繍を楽しんでいるところで、テーブルの上には布とたくさんの刺繍糸が所狭しと並んでいました。
 
「皆さん、上手だわ」

 針を刺しながら、エルザ達の手元を見ると見事な刺繍が出来上がっています。
 私はというとまだ半分も進んでおらず、針さばきがぎこちない。
 間違えないように丁寧にやっている結果なのですけれど。ほぼ初心者なのがバレバレです。

「フローラ様。その調子です。凄く素敵に出来上がると思いますよ」

 私の手元を覗いたルーシーがまだ形になっていない作品を褒めてくれました。
 褒めて伸ばす作戦なのかもしれません。

 そう言った彼女はすでに刺し終わっています。夕日が沈む海を模した見事な刺繍。夕日が映る海。オレンジのグラデーションが綺麗です。

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