婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「はあ、疲れたー」
刺しかけの布をテーブルの上に放ったケイトが首をコキコキと鳴らして壮大な息をついています。
「わたしはじっとしているよりも動いている方が得意なんですよねー」
見てみると何度も指し直した跡があって苦手な様子が見て取れます。
ちょっと、親近感。私だけではなかったわ。
エルザも見事な刺繍技を披露してくれて見惚れてしまう出来栄え。しかもそこ数時間でやり終えてしまうのだもの。尊敬してしまうわ。
未だ、半分にも満たない進み具合に落ち込んでしまうけれど、お仲間がいて少し救われた気分。
「エイ、ヤー」
テーブルから離れたケイトは体を動かし始めました。
手を前に突き出したり足を上げたり武術の型を披露するケイト。
彼女は護身術を習っているそうで、なかなかの腕前とか。
動きが洗練されていて美しい。侍女服の翻るさまが舞のようで見惚れてしまいました。
私もケイトに護身術を習おうかしら。
自分の身を守ることができると護衛騎士の負担も減るわよね。レイ様にお願いしてみようかしら。