婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

「いいのよ。言ったでしょう? わたくしは鬼ではないのよ」

「とんでもございません。王太子妃殿下は慈悲深いお方でございます。誠にありがとうございます」

 保身のために更に身を低くするビビアン様にはプライドの欠片も残っていなさそう。
 娼館よりも男爵領の方がいいに決まっているものね。わたしだってそちらを選ぶわ。そのためにはプライドもかなぐり捨てるわよね。形振り構っていられないもの。

 いいものを見せてもらったわ。

「あなたは本当に男爵令嬢でいいのね?」

「はい。十分でございます」

「そう。わかったわ。男爵令嬢として生きることを許可するわ」

「ありがたき幸せにございます」

 こすり付ける額の隙間から何かが光っているのが見えた。涙かしら?

「ただし、二十年後ね」

 アンジェラの一言で振り出しに戻ってしまった。

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