婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
「イヤー。イヤー。イヤよ」
やっと現実を理解したのかビビアン様が叫ぶ。頭を抱えてブルブルと震えていた。
「お願いです。お願いです。それだけはどうか、考え直してくださいませ」
鉄格子を掴み一縷の望みに縋るように必死に訴えるビビアン様を蔑んだ瞳で一瞥したアンジェラは膝を折って彼女に目線を合わせた。
「あなたは何でもすると言ったわ」
「あっ!……そ、んな……」
自分の言葉を思い出したのか、ビビアン様は力なくペタンとしゃがみ込んだ。どちらにしても娼館行きは覆らない。
「十分譲歩したのよ。あなたの男爵令嬢になりたいという願いも叶えてあげると言ったでしょう? そんなわがままを言うものではないわ。それともメイドや盗賊と同じ極刑でもいいのよ」
「ヒッ……」
ビビアン様は小さく悲鳴を上げた。
青白い顔が更に青くなる。死にたくはないらしい。
彼女の罪を思えば十分それに値するのだけれども、それでは生ぬるいもの。
アンジェラは扇子を閉じるとビビアン様の顔に添わせた。なぞるように頬を扇子が滑る。