囚われの令嬢と仮面の男
 やがて廊下の最奥にある貯蔵庫にたどり着いた。「姉さん、まさか……」とどこか引きつった笑みでアレックスが呟いた。

「そのまさかよ、関わりたくないならそこで見ていて」

 貯蔵庫の前には昨日と同じように見張り番がひとり立っている。昨日とは違った男で堂々とした風格があった。

 両手をグッと握りしめて見張り番に近づいた。

「ここを開けなさい、彼と話がしたいの」

「申し訳ありませんが、そのご命令には従えません」

 見張り番は頑とした態度で顔色ひとつ変えない。私は唇の裏側を噛んだ。耳の後ろに汗が浮かぶのを感じた。

「なら聞かせてちょうだい。彼にちゃんと食事はさせているの?」

「……いいえ」

「は?」と不満から声が大きくなった。

「嘘でしょう? 今日でもう三日目よ?」

「旦那様からなにも与えるなと仰せつかっております」

「そんなっ、あんまりよ! このまま飲まず食わずで放置だなんて、彼が死んでしまうじゃない!」

 見張り番を睨みつけながら食って掛かると、彼は悲しげに顔を曇らせた。

「……もとより。旦那様はそのおつもりでいらっしゃいます」

「……そんな」
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