囚われの令嬢と仮面の男
「申し訳ありません、お嬢様。実はいっとき管理を怠った状態が続いておりましたので、お花が全て枯れてしまって……」

「あら……そうなのね。残念だわ」

「お気持ちを落とされるのは当然です。なのでまた、明日にでもガーデニングをいたしましょう」

「ええ、そうね」

 あのデイジーが枯れてしまったのは残念だが、かえって土を掘るのに差し支えがなくなった。新しい種を植えるのは、今夜あの場所を掘り起こしてからだ。

 仕方なく前庭のテーブルセットで、妹とお茶をすることにした。

 白いティーカップから立ち上る湯気を見つめながら、アレックスにした話をクリスティーナにもしようかどうかを、散々迷った。

 けれど結局は当たり障りのない会話ばかりで、言えずじまいとなった。ふたりの侍女がそばに控えている状態で、一番の心配ごとを話題にはできなかった。

「実を言うとね、姉様」

 私が吐露できない代わりに、妹が何かを決心した目で心中を打ち明けてくれた。

「私、ずっと姉様に嫉妬していたの」

「……え」

 なにを、と思い表情が固まった。

 もしかして。本当にお父様のことで……?
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