囚われの令嬢と仮面の男
以前は私に対して、ずるいといった感情をむき出しにしていたのに、いったいこれはどういう心境の変化だろう。お母様から聞いた話が影響して、私に対する想いが変わったのかもしれない、そうも思った。
ーー『キミは選ばれないんじゃない。選びたくてもカゴの鳥で。誰にも手が出せないんだ』
ふいにエイブラムの言葉を思い出した。
ーー『どのみちキミは、この先誰かと婚約してあの家を出る身だろう。父親はそれすら許してくれないのか?』
彼は気づいていたんだ。お父様の判断で私の縁談がことごとく無くなっていたのを。
「もし姉様の気持ちが変わるようなら、遠慮なく言ってね? 私、ドーセットさんとの仲を取り持つことぐらいはできるから」
「……ええ」
地下に閉じ込められているエイブラムが好きなのだ、と。さすがに念を押して言う気にはなれなかった。
言えばきっとまた、病気として心配される。私は口を閉ざし、花を見ながら紅茶を飲んだ。
*
夜の帳が下り、お父様とお母様が帰宅した。家族揃っての夕食を済ませ、今はもうベッドのなかだ。
ーー『キミは選ばれないんじゃない。選びたくてもカゴの鳥で。誰にも手が出せないんだ』
ふいにエイブラムの言葉を思い出した。
ーー『どのみちキミは、この先誰かと婚約してあの家を出る身だろう。父親はそれすら許してくれないのか?』
彼は気づいていたんだ。お父様の判断で私の縁談がことごとく無くなっていたのを。
「もし姉様の気持ちが変わるようなら、遠慮なく言ってね? 私、ドーセットさんとの仲を取り持つことぐらいはできるから」
「……ええ」
地下に閉じ込められているエイブラムが好きなのだ、と。さすがに念を押して言う気にはなれなかった。
言えばきっとまた、病気として心配される。私は口を閉ざし、花を見ながら紅茶を飲んだ。
*
夜の帳が下り、お父様とお母様が帰宅した。家族揃っての夕食を済ませ、今はもうベッドのなかだ。