囚われの令嬢と仮面の男
 布団に包まりながら、アレックスの機転に感謝していた。あとで部屋に行ったら礼を言おう。

「で、どうだった?」

 私が寝たふりをするまで側についていたスーザンが、部屋を出ていたメアリーに尋ねた。状況からお父様の書斎に呼び出されていたのだとわかった。

「やっぱり私たちが買い物に出ている間に、お嬢様が貯蔵庫に現れたみたい。旦那様が見張り番に確認したんだって。……明日はお叱りを受けるわね〜」

「……そう。仕方ないわね」

 ハァ、とふたりの憂鬱そうなため息が聞こえる。

「お嬢様のご病気、早く良くなるといいけど」

「ええ、本当に」

 すぐそこに人が立つ気配と視線を感じ、神経が張り詰める。侍女たちが側に寄り、私がちゃんと眠っているかどうかを確認している。

 ことさら寝たふりを続けて、ふたりが退室するのを今か今かと待った。

 程なくして侍女たちの気配がなくなり、パタンと扉が閉ざされる。寝息を止め、そーっと瞼を持ち上げた。瞳を泳がせて視界を確認し、上体を起こした。

 侍女たちは居なくなり、部屋は私だけになっていた。ベッドに入るまで着ていた丈の長いローブを上から羽織り、ランタンを手に取った。
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