囚われの令嬢と仮面の男
"コンコン"……。軽く握った拳をびくつかせ、いくらか慌てる。控えめにノックをしたつもりだけど、思いのほか音が響いた。
「はい」と返事があり、侍従のヴァージルが出迎えてくれる。
「さっきはありがとう、アレックス」
部屋に入ると、書物を広げて見ていた弟と目が合った。
「いいえ、あれぐらいお安い御用ですよ」
ローテーブルに本を置き、アレックスがソファーから立ち上がる。
「それじゃあそろそろ行きますか?」
「ええ」
他の使用人や侍女らに怪しまれないよう、弟は侍従を下がらせていた。
「悪いわね、ヴァージル。また明日ね」
「はい。お休みなさいませ、マリーン様、アレックス様」
彼の退室を見送ってから、そろりと部屋を出た。花壇を掘り起こすためのシャベルはアレックスが持ち運んでくれている。
ランタンを提げたまま深夜の屋敷を徘徊すると、なにか悪いことをしているような気分になる。
一階を玄関とは逆方向へ突っ切り、普段は滅多に使わない通用口から外に出ることにした。
「はい」と返事があり、侍従のヴァージルが出迎えてくれる。
「さっきはありがとう、アレックス」
部屋に入ると、書物を広げて見ていた弟と目が合った。
「いいえ、あれぐらいお安い御用ですよ」
ローテーブルに本を置き、アレックスがソファーから立ち上がる。
「それじゃあそろそろ行きますか?」
「ええ」
他の使用人や侍女らに怪しまれないよう、弟は侍従を下がらせていた。
「悪いわね、ヴァージル。また明日ね」
「はい。お休みなさいませ、マリーン様、アレックス様」
彼の退室を見送ってから、そろりと部屋を出た。花壇を掘り起こすためのシャベルはアレックスが持ち運んでくれている。
ランタンを提げたまま深夜の屋敷を徘徊すると、なにか悪いことをしているような気分になる。
一階を玄関とは逆方向へ突っ切り、普段は滅多に使わない通用口から外に出ることにした。