囚われの令嬢と仮面の男
 腰を上げて土だらけの花壇から出ようと思った。側に置いていたランタンを手に取り、灯りを移動させたところで"それ"に気が付いた。

 ……え。嘘でしょう?

 ランタンを手にしたまま一度花壇から離れ、青々と茂る緑の壁に、恐る恐る近づいた。

 灯りを照らした部分を見て、心臓がドクンと鼓動する。

 十数年ぶりに、だれかの手によって生垣が切られていた。

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