囚われの令嬢と仮面の男
「どうって。見てたんならわかるだろう? 表情はツンとしてるし、いかにも高慢な感じがして萎えたよ。それに比べて妹は……愛嬌があるよな」
「今さら狙っても遅いぞ、このあいだ婚約したばかりだと聞いた」
「本当かよ……」
彼のため息を聞きながら、自然とおちた肩を片手で抱き、しゃがみこんでいた。あまりにも哀れで惨めで、自らに憐憫の情すらわいてくる。
高慢? 私が? そんな風に見えるなんて。
失敗を恐れるあまり、表情が硬すぎたのかもしれない。後悔したところであとの祭りだ。
ダンスホールから再び生演奏がはじまった。
集まった貴族たちは男女で手を取り合い踊りだす。みな自然と笑みが浮かぶのか、楽しそうだ。
緊張で頬をかたくしている者はだれひとりいない。うっかり殿方の足を踏んでしまう女性がいても、それもご愛嬌ととらえ、互いに笑い合っている。
私だけがこの場になじんでいない。
ダンスはすぐそばで行われているのに、彼らとのあいだに途轍もない距離があき、どこか遠くに取り残されたみたい。
有能と無能、幸せと不幸せ、そうした線引きがなされ、私だけがはじき出されてしまった。
「今さら狙っても遅いぞ、このあいだ婚約したばかりだと聞いた」
「本当かよ……」
彼のため息を聞きながら、自然とおちた肩を片手で抱き、しゃがみこんでいた。あまりにも哀れで惨めで、自らに憐憫の情すらわいてくる。
高慢? 私が? そんな風に見えるなんて。
失敗を恐れるあまり、表情が硬すぎたのかもしれない。後悔したところであとの祭りだ。
ダンスホールから再び生演奏がはじまった。
集まった貴族たちは男女で手を取り合い踊りだす。みな自然と笑みが浮かぶのか、楽しそうだ。
緊張で頬をかたくしている者はだれひとりいない。うっかり殿方の足を踏んでしまう女性がいても、それもご愛嬌ととらえ、互いに笑い合っている。
私だけがこの場になじんでいない。
ダンスはすぐそばで行われているのに、彼らとのあいだに途轍もない距離があき、どこか遠くに取り残されたみたい。
有能と無能、幸せと不幸せ、そうした線引きがなされ、私だけがはじき出されてしまった。