島の家を相続した!!

叔母、魚を洗いに溺れ危篤

時計は遡って、
ウイルスが蔓延する前の12月。

島の警察から電話がかかってきた。
父は定年後も嘱託で仕事を続けて、家にはいない。

母を介護する為、
withウイルスを掲げて、
リモートワークを推奨する
政府の提言よりもいち早く、
自宅で仕事をしていた
わたしが、
鳴り響く電話を取ったのが
島の家を相続する、
はじまり。

「は?叔母が海で溺れて危篤?」

父の母親がわりをしていた叔母は、
父と一回り以上は年上で、
100歳まで生きる勢いの女傑だ。

Google3Dマップで、
島の映像をみれば
90歳を優に越えて尚、
自転車で走る姿が、そこかしこ
認められるほどに、

ボケなし、病知らず、足腰頑健。

島生まれの島育ちは、
こんなにも元気なのかと
驚愕の対象である、叔母がだ。

「危篤って、ウソですよね?!」

ただ、
敢えていうならば
島の人間のくせに、確かに
泳げないのも、叔母だ。

「溺れたって、何故ですかっ?」

凶悪犯罪が秒で起こるような
街では考えられない、
呑気さをはらんだ
島の警察は、
暇なのかやたら丁寧に、
状況を教えてくれたのだが、

『魚、洗いに海ぃ行きよって、
おったみたいですなぁ~。』

なんとも都会では想像出来ない
状況説明で、

『助けん海入ったぁ、爺さんが
いうにゃあ、そぉゆと~から、
礼だけいいにいっとってくだぁ
さい。だけ、病院はぁ、、、』

しかも、助けにまた、
お年寄りが海に入ってくれた?!
とか、しれっという。

よりにもよって、
島の言葉が入って理解しがたく
それでも、
相手の警察官は
わたしに気を使って
分かる様に言葉を選んで
説明をしてくれるという
気遣いは伝わる。

とにかく、
わたしは急いで父にメールを
打った。

『島の叔母、
溺れて危篤。すぐ帰れ。』

ほどなく、
わたしと父は夜行高速バスの人と
なった次第。

お互いに
頭の片隅で、嘘だろうと打ち消す
気持ちと、
どこか
葬儀をどうしたらいいかと
心配する気持ちが

ないまぜになって、
もう
いい年をして
バス酔いしそうになりながらの、
エズきながらの
帰島旅となる。

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