桜の花びらのむこうの青
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私は開店と同時、朝八時からこの【カフェ・チェリーブロッサム】に来ている。

朝からほとんどページが進まない小説本にしおりを挟み顔を上げると、ダージリンのカップの中は空っぽだった。やはりミルクがないと味気ない。お代わりはミルク入りを頼もう。

すぐそばにあった壁掛け時計に目をやるとお昼前。

待ち合わせの時間まで決めておくべきだったと今更ながら悔やみつつも、彼がここに来てくれれば、そんなことは大したことない。

あの後、岬さんから再び連絡があり、三人はとりあえずY国からは脱出できているらしいと聞く。

彼が生きていると知れただけでどれほど安堵したことだろう。

たった一人の存在がこの地球上にあるっていうだけでこんなにも幸せなのかと思う。

約束の四月一日。

どうしてこの日を彼が選んだのか。

もしやエイプリルフールで、戻れなかったら戻れないで「嘘だよ」って言えるようになのかと穿ったことを考えたりしたけれど、古いスケジュール帳を繰って思い出してみたら、彼と初めてこの場所で待ち合わせをした日だった。

あの日もはりきって早めに到着した私はしばらく待ちぼうけをくらったっけ。

そんなことを思い出しつつ、店員さんにロイヤルミルクティを頼み終えたその時、誰かがカフェに入ってきた。

入ってきた人物の影が扉から差し込む午後の暖かい光に移り込む。

背の高い人。

私は目を大きく見開いてその人の方に顔を向けた。

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