桜と私と君
「お前、まじで何?」
「ウザイんだけど」
「俺彼女のこと愛してますアピールやめろ」
「俺は・・・本気で愛してるから」
「は?まじ調子乗んなよ」
誰もいないはずの教室から聞こえてきた声。

私の悪口を言ってる人達が誰かをいじめている。
いじめられてるのは…夕桜。
最初は信じられなかった。
夕桜はかっこいいし女の子たちはみんな夕桜のことが好きだから。
なのになんで。
怒り、悲しみ、色んな感情がこみあげてきた。
夕桜を助けないと、そう思った時だった。

「俺は美桜のこと見てればわかる!
お前らのせいで美桜がどんな思いしてるかわかってんのかよ!!
最近、美桜辛そうに耳塞いでるし
美桜と話したり電話してる時の声、いつもとは何か違った!お前らのせいだ!」

夕桜が声を上げだ。
何故か涙が溢れてきた。
声にまで出ていたなんて思ってもいなかった。

自分がどんなに弱いのか確信する。
また聞こえてくる声。
「そういうのがウザイんだよ!
あいつが辛いって言ってないんだから辛いかわかんないでしょ、」
「辛いって言わなくても美桜の声で俺は分かるんだよ」

夕桜がそう言ったあと、『バーン』と大きな音がした。
少しだけ扉から教室の中を覗くと夕桜が蹴られていた。
気がつくと体が勝手に動いていて教室に入っていた。

すると夕桜が驚いた目で
「み、お、、、」
と私を見つめてきた。
夕桜の目からは涙が溢れていた。
そして私の目からも涙が溢れていた。
「夕桜、行こ。」
そう言って夕桜の手を引っ張り、教室を出た。
「でもあいつら、、、」
夕桜が何か言いかけたが私は夕桜の手を引っ張って走り続けた。

気がつくと私の家の中にいた。
私は息を整えてから
「夕桜、ありがとう。ほんとにありがとう」
と伝え、椅子に座った。
すると夕桜もいつも座っている椅子に座った。

「美桜、全部見てた??」
夕桜不安そうな顔で私を見つめてくる。
「全部ではないけど、、、」
そう答えると夕桜が頷いて話を始めた。

「実はさ、あいつらが美桜の悪口言ってんの聞こえてきて、美桜が元気ないのはこれが原因だってわかってさ、俺が声掛けたんだ。
そしたら蹴られたりして言い合いになった。
まさか美桜がいたとは思わなくて美桜のこと全部わかるみたいな口調で話してた。ほんとごめんな。自分ではわかってるつもりでも美桜のこと全部わかってるわけじゃないのに。」

夕桜は怖がりもせず私のためにあいつらに話しかけてくれたのだ。
嬉しかった。
「夕桜、私の事全部わかってるよ。
私よりも私の事わかってる。
ありがとね。私のためにあいつらに立ち向かってくれて。ほんと嬉しかった。」

すると夕桜が
「俺、その美桜の笑顔が大好きなんだ、
最近美桜のその笑顔、見れてなかったから嬉しい」
と微笑んだ。
つい照れてしまう。
久しぶりにキュンとした。
卒業まであと何回夕桜にキュンとさせられるのだろう。

夕桜が家に帰ったあと、届いたばかりの箱から丁寧にカメラを取り出した。
ラッピング用に買っておいた可愛い袋や飾り付けを使い、可愛く仕上げた。
卒業式、夕桜が喜んでくれることを想像しながら丁寧に私の机の上に置いた。

卒業式当日。
いつものように家のチャイムが鳴る。
ドアを開けると夕桜と夕桜の両親がたっていた。

「おはよう美桜ちゃん、ごめんね、私たちが来るとご両親のこと思い出しちゃうわよね」
夕桜のお母さんに謝られ、急いで首を振る。
「おはようございます。そんなことありません。卒業式なんだからご両親が来るのは当然ですし」

そう言ったとき、忘れ物をしていることに気がつく。
「あ、すみません、中に忘れ物しました。
すぐ戻ってきます、!」

急いで部屋の中に入る。
大切なものを忘れていた。
夕桜へのプレゼントだ。
自分なりに頑張ったラッピングを崩さないようにカバンの中に入れて玄関に向かった。
「お待たせしました。待たせちゃってすみません。」
私が謝ると夕桜のお父さんが
「美桜ちゃんは昔から相変わらず可愛いな」
と笑った。
なんだか照れてしまった。

学校に着くと女子はメイクに気合いを入れていた。
いつもよりみんなキラキラして見えた。
卒業式が無事に終わり、教室に戻るとみんな大号泣だった。
私も泣いていた。

思い出をふりかえって見ると必ず私の隣には夕桜がいてくれた。
辛い時も夕桜がいてくれた。
今も夕桜が隣にいる。
改めて私の隣は夕桜なんだと確信した。
先生の話が終わり、校庭に出るとみんな友達と写真を撮ったり友達と抱き合ったりしていた。

私はカバンの中から慎重に夕桜へのプレゼントを取りだした。
「夕桜、渡したいものあるんだ」
そう声をかけると夕桜が優しい笑顔で
「俺も、美桜に渡したいものある。でもここじゃ人沢山いるからあっち行こ」
と人がいない所を指さした。
2人でそこに向かった。

「はい、今までありがとう、これからもよろしく!
私なりに選んだから喜んでくれると嬉しい」

私がプレゼントを渡すと夕桜は目をキラキラと輝かせた。
「ありがと!めっちゃ可愛い」
そう言われてキュンとした。
私がほっぺを赤くしていると
「あ、俺からのプレゼント、これからもよろしくな」
と、夕桜がプレゼントをくれた。
「ありがとう!」

お礼を伝えると夕桜は髪の毛を触りながら
「大切にしてくれると嬉しい」
と囁いた。
その声にキュンとした。
「もちろん!大切にするね」

とこたえてから2人で写真を撮った。
桜の花びらが綺麗に散って写真に映っていた。
花びらがハート型に見えてドキドキした。

「あ、それともうひとつプレゼント」
夕桜の声にびっくりする。
もうひとつプレゼントなんて私は用意してないのに。

「はい、今までありがとう、これからもよろしくな」
夕桜が花束のようなものをくれた。
でもよく見るような花束ではなかった。
全て桜の花だった。
初めて見る花束に心を打たれた。
「すごい綺麗、、、ありがとう」
すると夕桜が笑って
「初めて見たでしょ?知り合いに花束とか作る人がいるから頼んだんだ」
と私の顔を覗いてきた。
「ほんとにありがと、初めて見た!」
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