★.:* ◌𓐍𓈒 LAST シンデレラ 𓈒𓐍◌ *:.★~挙式前夜に運命の出逢い~
「実はさ、俺も同じ心境。昼過ぎに最悪気分で起きたら無性にここに来たくなってさ。で、ふと亡き母との約束を思い出したら堪らなく虚しくなって初めて迷いが……。マジ逃げたい気分」

 だから私を放っておけずに? ……私達、同じ想いでここにいたのね……。

 迷子の幼子のような彼の表情に堪らなく切なさ募り、自然と彼に寄り添い労りを込め背中を撫でた。

「約束って?」

「……『平凡でいい。真に愛する人と愛溢れる家庭を築いて』……きっと母の真の願いだったんだろう。俺、愛人との子で母子家庭だったから、ずっと幸せな家庭に憧れてた。でもいつからか愛なんて幻想、セフレで十分。裏切らないのは金だけで仕事一筋。将来を約束された結婚に満足してたのに……俺らしくない」

 彼は、今度は城下の漆黒の森を見下ろし、また泣きたくなるほど切なく哀しみに濡れた表情を見せた。そして苛立ちを隠せない口調で心の内を綴った後、静かに涙を流し慌てて横を向きながら拭うと、恥かしげに笑い闇夜の先を見続けた。

 私は、男性の涙に戸惑いながらも初めて綺麗と感じていた。

「お母さんの遺言の気がしたんですね」

「……かも。凄い、メンタリスト?」

 彼は、少しからかい眼で背の低い私を見下ろした。

 少し濡れた瞳が優しく揺れる姿に、私の胸も揺れ動き慌てて彼の背中の手を外した。そしてさりげなく手摺にもたれ煌めく夜景に視線を移した。
< 5 / 44 >

この作品をシェア

pagetop