キミの魔法にかけられた~隣のデスクの無愛想な後輩が急接近してきて!?~
私の言葉を遮ったのは、甲斐くんの単調な声。
ゆっくりと向けられた視線に、思わずまた引き込まれそうになる。
「えっ、えぇぇぇぇ!?」
世の中には不思議な事があるみたいで、彼が右の人差し指を上にあげたその瞬間──。
プランターに植えられた蕾だった筈のお花が、ポンと咲いたのだ。
「先輩、凄い顔してますよ」
おばちゃんが好きだといっていた、青くて可愛らしい小さな花。
屋上に上がってきた時は、全部 蕾だったのに。
「な、なんで?」
「だから、顔崩れてますって」
そこには、確かに小さな青い花が顔を出しているから、自分の目を疑うしかない。
「てッ、手品!?」
「……種も仕掛けもありませんけど」
いつの間にか、甲斐くんの胸ぐらを掴んでいた私の声は、馬鹿みたいにトーンが正常じゃなくなっていく。
「え、や、嘘でしょ?信じらんない……」
でも、この状況をどう説明できる?