赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


『どうやら美織さんと麻里奈さん、そしておそらく庭師の方でしょうか……若い男性に見られていたようです。私がご自宅近くまで出向いたばかりに申し訳ありません。配慮が足りませんでした』

かかってきた電話に出ながら体を起こす。
美織が静かな寝息を立てていることを確認してから寝室を出た。

彼女は昔から一度寝入るとよほどのことがない限り翌朝まで目を覚まさない。それでも、電話の相手が相手なだけに用心するに越したことはない。

二十四時を回った廊下に人間の気配はなかった。
今現在この家で雇っているのはシェフと使用人ふたり。いずれも住み込みではないため、唯一の住人である美織が眠っている今、誰に聞かれる心配もない。

「いえ。事情が事情ですし、どうにでも誤魔化せますので。ですが、よく見られていたことに気付きましたね」
『実は、匡さんと別れた後、麻里奈さんに捕まり責め立てられたんです。〝証人は私だけじゃない。美織さんも相葉も見てたんだから〟と。それがなければ気付きもしませんでした。夢中になりすぎていたのだと思います。申し訳ありません』



< 134 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop